2006年08月16日

ど肝抜くグライスナー楽器用材店

 この日の宿はエアランゲン市のホテル・ルイーズ。ニュルンベルグから電車で10分程度。自宅からネットで予約できた。便利になったものだ。

 あくる朝、いよいよタクシーでグライスナーさんの楽器用材店へ向かう。タクシードライバー(ご婦人)と会話の練習をしながら15分ぐらいで到着。その間カーラジオでブラームスの交響曲一番が鳴っていたが、ドライバーは 『ブラームスのイチバン? シリマセン』。

 グライスナー材料店は何年か前に松村さんが単独で開拓された材料屋さんで、三代続く老舗だ。弦楽器の特に表面板(スプルース材)を主に扱っていて品質には定評がある。到着するや否やご家族で我々を歓待してくれた。

 工場の前には直径1m以上の見事な丸太が立てて置いてあった。今回は我々のためにこの丸太を挽いてくれていたのだ。その数、約1000セットぶん!

 まだ手つかずの材料の山の中から、一番最初に自由に選ばせてくれるというのは少なくとも私には通常あり得ないことで、普段は世界的な製作家とか大量に買い付けるバイヤーだけの特権となっている。今回は松村さんのいろいろな御尽力によってこれが実現したわけだ。

 とにかくものすごい量に圧倒される。ギターよりバイオリン属の材料のほうが多い。おそらく何十万セットもの「宝の山」。まさに自然の恵みだ。酸性雨のためにドイツの有名なあの「黒い森」はもちろんヨーロッパじゅうの森が危機的で、とりわけ楽器に使うトウヒ(スプルースのこと)の被害が甚大の由。最近の国際間の取り決めや環境先進国の人々の意識の高まりでブレーキがかかりつつあるそうだが、依然として進行している。
 ギターでは最高とされる「ドイツ松(ジャーマンスプルース)」の良材は非常に残念なことに既に枯渇したと云ってよい。最近はヨーロッピアンプルースと称してヨーロッパ東部地域産のものが主流である。グライスナーさんところも同様であった。

 さて、膨大な山の中から5名の材料選びが始まった。一枚ずつ木目、堅さ、艶、音で判断するが、何を重要視するかは各自でちょっと個性があったようだ。
私の感じでは、まず90%以上の材料がこれまで自分が作ってきた材料並み以上と思われた。そのうち半分近くは明らかに優れていて、さらに20にひとつぐらいの割合で「とびきりクラス」に遭遇することができた。それは、原木をスライスして間もないのに既に乾いた良い音を響かせるので驚いた。楽器に使えるまで少なくとも3〜5年は自然乾燥しなければならないが、そのときがもう待ち遠しくなった。

 今回は松村さんの呼びかけで製作家30名以上からの購入依頼があった。そのおかげで数量がまとまったのでグライスナーさんが特別な計らいをしてくれたということである。自分も4人ぶんの材料を選ばせていただいた。こんなチャンスはこの先もなかなか無いと思われる。

 グライスナーさんが『お昼にしましょう』と優しく声をかけてくれたが、皆ないっこうにやめようとはしない。しばらくして業を煮やしたのか『私はもう腹がペコペコだ。空腹ではいい仕事が出来ないヨ!』。その声で昼食となった。
 田園地帯をグライスナーさんのBMWで走る。この地方の名産はなんと「コイ(鯉)」なんだそうで、養殖池が散見された。そこでランチは「コイのフライ」。30cmぐらいの魚をチキンナゲット風に丸揚げしたような感じだった。骨の間にフォークを突き刺して身をこそげ取るんだよと教えてくれた。豪快だが極めて美味で満腹になる。ビールの旨かったこと。

 午後は表面板以外の材料選び。横/裏板(ローズウッド、メープル)、指板(黒檀)、ネック材などを選び出す。どれも一級品だった。
そして大きなパッキンケースに詰め込んで(10箱)厳重に梱包。『隙間があるといけないのでその辺の木でも詰めておきなさいと』とグライスナーさん。その辺の木とはギターのブレイシング(力木)に使う材料のことだったので喜んで詰めさせていただいた。

 その日のうちに事務所で清算を済ませた。息子で経営者のシュテファン・グライスナーさん(下の写真の赤いセーターの長身)に名刺を渡すと、さっそくその場で私のホームページを見てくれて、いろいろ話しが盛り上がった。グライスナーさんご一家は英語も非常に堪能でいらっしゃる。

 『また必ず来ます』とか『ネットでまた注文しますね』とか云って、車で送っていただいたエアランゲン駅でお別れした。

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posted by nara_craftm at 19:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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